タイズプレゼンテーション

夢中の深層~インタビュアー川邊健太郎~

第二回 永田寛哲さん 僕の人生を変えたアイドルが教えてくれたこと

AKB48の総選挙対策は、企業経営に近い

川邊:で、あの。AKBは総選挙っていう大変有名なイベントがありますけど。まあ、これは話せる範囲内で結構ですけど、朝長さんの躍進にコイタさんの努力があるような気がするんですけど?

永田:一応、できる範囲のことは頑張っています。

川邊:活動開始はどれくらい前からですか?総選挙は6月でしたっけ?

永田:そうですね、毎年6月上旬くらいにやりますね。

川邊:どれくらいの期間、準備したり努力を重ねたりするんですか?

永田:下準備みたいな事から考えると、2か月くらいですかね。実際の投票期間というのは2週間くらいなので。

川邊:決められていますもんね。

永田:本当に忙しいのは、投票期間の2週間くらいです。

川邊:下準備というのは何をするんですか?

永田:まず、どれだけ投票券を確保できるか?という問題があります。

川邊:私も手伝った事があります。

永田:そうですね。川邊さんにもお手伝いしていただいたことがあるんですけど、CDを剥いて、投票券を取り出して、16桁の無秩序な英数字を入力するという作業は、なかなかの手間なんです。

川邊:そうですね。1回投票するのに1、2分かかっちゃいますもんね。

永田:そうなんですよ。なので、お金があればどうにかなる話じゃないんですよ。人の協力も不可欠で、なおかつCDっていざ買おうと思っても、そんなに売ってないんですよ。CDショップに行って、「同じCD1000枚下さい!」と言っても買えませんよね。

川邊:買えないですよね。

永田:だから、どこでCD買うかって結構重要なんですよ。だいたいどこも購入制限がありますし。

川邊:1人何枚までですよという制限ですね。じゃあ結局、色んなお店からちょっとずつ買い集めなきゃいけないことになるんですね。

永田:お店から買う場合はそうですね。僕はその握手券付きのCDを予約販売してるAKB本家のサイトがあるんで、そこで大量に申し込んだりします。でも、それも限度があって抽選もあるので多く買うためには、投票券はいらないというファンも多いんで、そういう人から大量に買います。

川邊:人から買い集めるんですか?

永田:そうですね。

川邊:大量に買い集めてくるのも大変で、さらにそれを破いて番号を出してその人に投票するっていうのに、人手がかかるんですね。それは朝長さんだったら朝長さんのファンで、ネットワークしていくんですか?

永田:そうですね。「選対(総選挙対策本部)」って言うんです。

川邊:選対。本物の選挙と一緒で選対のメンバーがやるんですね。

永田:そうです。選対のメンバーで、幹部みたいな人達が色々と段取りを組んで、協力者を募って、1か所に集まってみんなで入力します。

川邊:1か所に集まるのには何か理由があるんですか?

永田:まず、投票券がすごく貴重というか、換金性が高いんですよね、1枚900円とかで売り買い出来てしまうんです。

川邊:ヤフオクでも売ってますもんね。

永田:そうですね。いくらファンとはいえ、実際に票を入れたというのを、ある程度確認できないと、選対としても怖いんですよ。

川邊:ファン同士信頼してるけど、その一方で監視もしてるわけですね。

永田:少ない可能性ではあるんですけど、スパイがいる可能性もあるので。

川邊:他の選対のスパイがいる可能性が?

永田:やれば効果的じゃないですか。相手の票をマイナスにして、こっちの票をプラスにするっていう。

川邊:なるほど。じゃあ「投票やっとくよ!」って言って、外でやられると、他のメンバーに投票してしまう可能性があるわけですね。

永田:川邊さんにも別の子に1票入れられたんですよね。

川邊:そうですね。全然違う子に入れちゃいました。

永田:もしそれで順位が変わってたら…、僕は川邊さんに何したかわからないです。

川邊:そうですね。殺気を感じながらですけど、思わずHKT48の宮脇咲良(みやわきさくら)ちゃんという子に入れちゃいました。ああいうことを防止するためですね。

永田:そうです。あとは、みんなで共通の目的を持って、1つのことを徹夜で成し遂げる、文化祭みたいな感じですね。ああいう気持ちを共有する事によって、結束感が生まれるといいますか、もっと頑張ろうみたいな、お互いを励まし合うためでもあると思います。

川邊:お互いに励ましあうのは重要でしょうね。私も1晩徹夜で投票させてもらいましたけど、ものすごい大変ですからね。あれ1人で投票してたら辛いですよね。

永田:辛いです。

川邊:結局、ああいう投票っていうのは、単にお金があればできるわけじゃないってことですね。条件とかリーダーシップとか、マネジメントとか。

永田:これはまさに企業経営に近いなと思いますね。

川邊:ビジョンを掲げて、「今回、朝長を何位にしようぜ」って言って、メンバーを集めて、資金を集めてそれを管理するわけですからね。

永田:お金も重要だけど、そのお金を効果的に使うためには人が重要で、その人をどうマネジメントするかみたいなことが重要ですからね。

川邊:本当にそうですよね。でもまあ現場で拝見しましたけど、みんな夢中になってやっているというのが、僕はものすごく良かったです。こんなに何かに熱中してやっている人達、他にいるのかなってくらい。2週間ずっとみんなでやっているんですか?

永田:いや、さすがにあれだけの大人数が集まるのは、2~3回ですね。

川邊:中間発表の前とかですか?

永田:そうですね。まず「選挙速報」というのがあります。その日の夜はだいたい集まって投票します。あとはやっぱり土日じゃないとなかなか人数が集まらないので、2週間のあいだにある土日とかを使って進めていくという感じです。

川邊:そういう努力の甲斐もあって、朝長さん、良いランキングになるじゃないですか。僕達なんかがすごく興味があるのは、その総選挙直後の握手会で、何を話しているのかっていうことです。コイタさんは何を話すんですか?例えば朝長さんに「俺はいっぱい投票しといたから」ってアピールするんですか?

永田:いや、僕はそれはしないようにしています。

川邊:おお、それはどうしてですか?

永田:僕の中での美学みたいなもんですけど、「僕のおかげでこれだけ票が入った」とか、「これだけ順位が上がった」ということを誇示するのは、そもそもあまり格好良いものじゃないなと。何よりも彼女の様々な努力の結果により出た順位であって、別に僕の手柄だとは全く思っていないですね。

川邊:なるほど。1人の人だけによって成り立ってるわけじゃないと。そういう風に下にバーっていっぱい色んな人がいるから。

永田:そうですね。

川邊:これは、なかなか深い世界ですね。

永田:僕の中でも凄く矛盾している気持ちっていうのもあるんですよ。例えばさっきも「メンバーの迷惑になりたくない」とか、「こういうことされると嫌だろうな」って思うからしてないことってもちろんあるんですけど、突き詰めれば、こういうことをしている大人自体がおかしいじゃないですか、どう考えても。

川邊:そうですよね。冷静に考えておかしいですね。

永田:そこは客観視をしている部分はあるんですけど。それでもやっぱり、推しがアイドルとして活動している以上、それを全力で推すべきだと思うんです。ファンである以上、応援するっていう行為は、絶対的に必要なことなんですよ。それは僕がおかしい大人であっても、何か力になれるっていうことは必要だろうなと思っています。

川邊:なるほど。全体におけるおかしさはさておき、真心はあるということですね。

永田:そうですね。その気持ちはあります。

川邊:とても良いですね。やっぱり深いですね、アイドル追っかけの世界は。

永田:僕は、認識してもらう、レスをもらうということに対して、特にこだわるようになってしまったんですけど、その一方で、仮にまったく認識してもらえなくても、アイドルは素晴らしい、尊い存在だと思っています。そういう二律背反的な気持ちを抱いてしまう自分に対して、苦悩することもありますね。

川邊:なるほど。そういうものを好きになってのめり込んでしまうおかしい自分は嫌だけれども、それでものめり込んでいってしまうということですか?

永田:そうですね。別に僕を認識してなかろうが、純粋に応援したいと思うんですけど。その一方で、そういう気持ちもありますね。なんか禅問答みたいですけど(笑)

モーニング娘。は長嶋茂雄、AKB48は野村克也

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