川邊:それから、災害支援活動や防災活動もやられているということですが。
ハカセ:僕が20歳のとき、阪神・淡路大震災が起きて、アウトドアをずっとやってたんで、友達とバイクにテント積んで被災地に行ったときに何かできる気がしたんです。僕らは火を起こせるし、なんでもできる気がしていたんです。でも結局、何もできていないような気がして、被災地から戻ってきて悩んだんです。そのときに、僕らみたいな子を、何か起きたときに増やさなきゃいけないと気付いたんです。それからしばらくして、東日本大震災があったときに、僕らは頼まれてもいないのに、若い子たち連れて現地に入ってテントを張ったりしました。そしたら、日常では人から喜ばれも褒められもしないスキルは、災害を受けた場所で活きました。
川邊:間違いなくそうですね。
ハカセ:アウトドアをする人は、そのスキルを人と共有しなきゃいけないと思いました。みんながアウトドアスキルを持っていたら、死なない人を増やせる気がするんです。僕ら自衛隊じゃないから、辛い人を救助することは本職ではないけれども、死なないスキルを共有することはできると。なのでアウトドアチームを作って、災害支援をするということですね。
川邊:最近出動したことはあるんですか?
ハカセ:この1年は、実は熊本にも入っていたんですけど。熊本よりも長く入っていたのが、ネパールでした。
川邊:地震がありましたね。行ってどういうことをするんですか?
ハカセ:たとえば、熊本は局地的に崩れたりしてすごいんですけど、通りを挟んで向こうは銭湯がもう開いてたりするんですよ。でも、ネパールになると、僕らの文化にないカーストという部分もあるので。物資がまったく届かない村があるんです。
川邊:そういうところがあるんですね。
ハカセ:去年は6回にわたってネパールに入ったんですけど、家の構造が変だったり、防災に関する教育がされていないことが多いです。そもそも、学校がいろんな村にできたのは、ここ30年くらいなんです。なので、字が読めない年配の方はいっぱいいます。 ネパールの首都・カトマンズから近い場所にあるローカーストの村に入って、次に何か起きてもいいように絵本になっている教科書を作ろうと思っています。絵本って、大人が子どもに読み聞かせるじゃないですか。子どもしか字が読めない村がいっぱいあるので。子どもがお父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんに読み聞かせられる。地震ってこういう仕組みで起きるんだといった内容の防災に対する絵本を作って現地に持ちこもうとしてます。
川邊:アウトドアが災害に役に立つというのはその通りですよね。
ハカセ:そもそも、地震も津波もアウトドアですからね。地球で遊んでて、僕ら地震大国で生まれ育っているんで。それと付き合えないといけない気もしますし。それがあって当たり前ですよね。