大木:地震学って地球の中しか見ないんですよ。地面の中の現象に興味があって、地面の上の建物とか人とかにはそんなに興味がないんですね。だから単純に地球の構造を調べて「何年で何%の確率で起こります」と評価するだけで終わっていたんですけど、それでは一般の人はよくわからないですよね。そこを伝える、コミュニケーションすることが大切だと思うんです。地震学は地面の方を向いていますが、きちんと人間の方を向くところまで広げて、新しい地震学を作っていきたいと思っています。
川邊:そうやって考えるようになったきっかけとかあったんですか?
大木:2004年の中越地震です。発生した2日後の新聞で、余震で亡くなった女の子の記事を読みました。地震が起きた時、お風呂に入ってた女の子に、おばあちゃんが「下着だけ着けて出てきなさい」って言うんです。ところが、その子は下着を着ている間に余震で亡くなってしまって、おばあさんは自分のことを責めていらっしゃるという記事だったんです。もし私がその場にいたら、少しは地震の知識があるので「すぐに余震が来るから、裸でいいから出てきなさい」と言えたと思います。でも、おばあさんはそれができなかった。これは地震学者がちゃんと知識を伝えてこなかったところに問題があると感じました。これからは知識を使って、人に伝えることもやっていこうって。
川邊:そこで防災とつながるわけですね。