川邊:アマゾン川で珍しいワニを捕獲した当時の話は?
柳生:どこの国かは言えないんですけど。船の上から特別なワニを見つけて、現地のガイドに英語で「とめてくれ」って言ったんですけど、英語から現地語に通訳するのが遅くて止まらないから、そのまま川に飛び込んだんですよ。
川邊:ワニ欲しさに飛び込んだんですね。
柳生:しっぽを入れて70cmくらいのワニを捕まえました。
川邊:なんていうワニですか?
柳生:カイマンという種類。特別なカイマン。そのときは、リリースしようと思ったんですけど、結局それから10日間エサをあげて、同じ部屋で過ごしました。
川邊:それは珍しいワニと過ごしたかったからですか?
柳生:一緒に過ごしてどんな性格のワニだとか知りたかった。ただ、いざお別れの日になって「何がなんでも欲しい」「どうしても日本に持って帰りたい」と思ってしまって。
川邊:そのワニは国外に持ち出し禁止ですか?
柳生:持ち出しも持ち込みも禁止。「1匹だし、売り物でもないし」「これは売りものじゃない、カワイイから持って帰る」って自分への言い訳。だから、許されてくれと。
川邊:ずいぶん前の話ですよね。
柳生:20数年前の話ですけどね。まだ20代の頃ですから。思い余って雑貨屋に行ってガムテープを買って、現地の人間に身振り手振りで背中にワニを置いて、「ガムテープで自分ごと巻いてくれ」と頼みました。
川邊:生きているワニですよね?
柳生:スーツケースに入れても手荷物でも、空港でX線検査があるじゃないですか。X線検査にワニが写ったら終わりでしょ。
川邊:わかりやすい(笑)
柳生:背中にワニを巻いて、その上からTシャツを着て、ブカブカのジャケットを羽織って「どうせ捕まるなら日本で捕まりたいな」と思いながらとりあえず金属探知機に反応するベルトとか財布をぜんぶ外して、後ろにワニを巻きました。そしたら、なんとか通れたんですよ。でも飛行機の中で座席にもたれたら、ワニがかわいそうじゃないですか。だからずっと中腰で座るわけですよ。
川邊:もたれられない。ちなみに日本までどれくらいですか?
柳生:10時間以上。でも、「あと1時間ほどで日本に着きます」っていうアナウンスを聞いたときに安心してしまって、急に意識がなくなって、ハッと思ったらスチュワーデスに起こされて。「着いたんで起きてください」と。「やべえ!ワニが!」と思ったんですけど、とりあえずここでは…。
川邊:取り乱すわけにはいかない。
柳生:そうです。まだ日本の税関という最後の難関が残っていますんで。それでスーツケースを受け取って、税関に行って、「何か、持ち込んじゃいけないものありませんか?」って言われて、「ありません!」って言って。「はいはい、じゃあどうぞ」って言われて、「やったー!」と思って、そのままスーツケースをトイレの前に置いて。すぐトイレに駆け込んで服を脱いで自分でガムテープを外して、ワニを見たらグタっとなっていて。
柳生:「え?」と思ってワニの胸に手を当てたら、心臓が動いてない。「うわ、死んでる…」って思って。もうなんか悔しいのと悲しいので、水道水を飲ませて、ワニの口を押さえて人工呼吸でフーフーフーフーやって。
川邊:空港のトイレで(笑)
柳生:そしたら他の人が入ってきて、パッとその様子を見て、1回ドア閉めて。
川邊:でしょうね(笑)
柳生:だって男が成田空港のトイレでワニに口つけながら泣いているんですから。
川邊:それは背中で圧迫していたから死んじゃったんですか?
柳生:あとからわかったことなんですけど、ワニってしっぽを曲げると呼吸できないんですよ。
柳生:タイとかでクロコダイルのレスリングショーとかあるじゃないですか。あれもしっぽを使ってワニをコントロールしているんですよ。
川邊:ワニは、どういう仕組みかわからないですけど、とにかく呼吸をする際はしっぽが重要で、それに体重をかけたら曲がっちゃったわけですね。
柳生:でも機内で何度か見たときには生きていたんですよ。
川邊:あ、何回か見たんですか。
柳生:トイレ行って、鏡を見ながら水やって。
川邊:水を飲むんですか。
柳生:飲みます。
川邊:そのときは、生きていて。
柳生:生きていたんですよ。だから最後に寝てしまったのが悪かったのかな。
川邊:最後の最後に失敗しましたね。
柳生:「港で船を破る」ってやつですよね。