川邊:柳生さんはシーラカンスの捕獲隊に日本人で唯一加わったことがあると聞いたんですけど、どういう経緯で?
柳生:2000年頃にインドネシアのスラウェシ島マナドで新種のシーラカンスが発見されて。国際法上、新種の場合はワシントン条約の国際会議定例会があって、その時点で認められないとワシントン条約に含まれないんですよ。つまり、保護されるまでの間に時間差があって、その時間差を狙って日本に連れてこようかなっていう。
そういう経緯でマナドっていうところに行っていろいろ調査したんだけど。結局、海外の通信社とかに情報が漏れて、リークされて。修学旅行生とかを主なお客さんにしている水族館は「そういう貴重な魚を獲っていいのか」って。
川邊:批判された。
柳生:シーラカンスを狙って水族館の経営に響くとヤバイということで中止になったんです。それがなければ確実に獲れていたんです。他の海と違って、インドネシアのシーラカンスってちょっと茶色なんですよ。つまり、水深が浅いの。他のシーラカンスはやっぱり200mは潜らないとなかなか見られない。だけどあそこは80mから100mで見られてしまう。だから、ビッグチャンスだと思っていたんですけど途中で中止命令が出たんです。
川邊:そのあと、撮影に成功したんですか?
柳生:その前ですね、1990年です。
川邊:それはどういう経緯で?
柳生:それも同じ水族館の依頼です。だから二度捕獲に失敗しているんですよ。
川邊:有名な関西のラディカルな某水族館ですよね。最初のときは獲れたんですか?
柳生:獲れましたよ。漁師を何人か雇って、釣ってもらってすぐに鉄の檻に入れて1回沈めました。弱っていたんですけど、その檻の中でアナゴにやられたんですよ。
川邊:アナゴにですか?
柳生:アナゴに食われた。もうピラニア並ですね。肉がほとんど残ってなかった。
川邊:そのときの心境は?
柳生:はじめて知識不足を認識しましたね。アナゴにあんな力があったのかっていう。
川邊:じゃあ、そのときもワニのときみたいに意気消沈。
柳生:そう(笑)
川邊:ペットショップに卸す用のワニを持って帰ってきて大変なことになったとかいう話もありましたよね?
柳生:アメリカから輸入したときですね。飛行機の中にアビールームっていう、動物を入れる部屋があるんですよ。そこを指定して輸送をお願いしたんですけど。
川邊:ワニ、何匹ですか?
柳生:300匹。それで、大阪空港に着くと日本航空の人が慌てて私がいた通関事務所に来て「ちょっと見てほしい」と言うので「何があったんですか?」と聞いたら「ワニがコチコチになってる」と言われました。ワニ肉と間違えて飛行機の冷凍庫に入れたらしくて。
川邊:ぜんぶカチカチですか?(笑)
柳生:「とりあえず見てください」と言うので「ああ、もうこれダメですね」と。「このワニどうしたら良いですか?」と聞かれて。とりあえず、価値がないということでインボイス(適用税率や税額の書類)を0にしてもらって、税関の人にも見てもらいました。それで「こちらでは処分の仕方がわからないので、柳生さんの方で持って帰ってくれませんか?」と言うから、ラッキーと思いました。
川邊:なんでラッキーなんですか?
柳生:それがアメリカのアリゲーターだったからです。アリゲーターはたまに氷の下でも動くんですよ。越冬するものもあるので、もしかしたらチャンスがあるかもしれないと思いました。
川邊:でも、カチコチになっているんですよね?
柳生:家に300匹持って帰って、ゆっくり常温の水で戻していったんですよ。そしたら半分以上生き返ったんです。
川邊:マジですか(笑)
柳生:それでインボイスと送金証明書出してくれって言われたので、ワニの代金の数百万を足して、ぜんぶ日本航空から振り込んでもらったんですよ。
川邊:弁償してもらってね。だけど半分は…。
柳生:生き返った。丸儲けでしたね。