タイズプレゼンテーション

夢中の深層~インタビュアー川邊健太郎~

第六回 樋口卓治さん 「今、観たい」と思わせる番組を1分でもつくりたい

『報道ステーション』の最後の挨拶を超えればいい

川邊:今、古舘伊知郎さんが復活といいますか、『報道ステーション』を辞めていろんな番組に出られていますが、全面的に関わられているということで、話して頂ける範囲でいいですけど、今、どんなことをやっていて、どんな期待を視聴者は持てばいいでしょうか?

樋口:自分をベースに語っちゃうと、古舘プロジェクトというところに放送作家として入って、右も左も分からなかったときに、右にも左にもいたのが古舘伊知郎で、その人はとにかく予習するんです。準備、予習、それが初めてのしつけだったんですよ。だからすべてそういうことしなきゃいけないっていう育ちだったから。その人が報道番組をもったことでさらに予習して毎日を過ごしてきた。それで今のテレビのスキルとか喋るスキルっていうのを兼ね備えて帰ってきたから、僕の中ではモンスター化してるんです。

川邊:パワーアップしてるんですね。

樋口:この人と対峙するには、ちょっと武器が必要だなと思っていて。いろんな武器をかき集めたりして、そのときにこのハードルを超えればいいんだなっていう基準を決めたのは、『報道ステーション』の最後の挨拶だったんですよね。あれは視聴者として感動したけど、これより下のことをやると自分は負けだなって。これよりなにか面白い企画を考えれば、次に行けるんじゃないかなって。

川邊:なるほど。

樋口:『ぴったんこカン・カン』って番組に出てもらったときに、ちょっとそれは越えられたけど、その中でもまた面白いこと言うんですよね。それを観たときに、今度はこれをどう越えようかなっていう、一個一個考えてって。歳も50を越えてるから、箸が転がっても面白くはないんですよ。そういったときに、喋り手とか芸人じゃないジャンルで新しいことをしたいなっていうのがすごいあって。「そのためには古舘さんだ」って。

川邊:なるほど。

樋口:やっぱりダウンタウンが出てきたときって、ダウンタウンみたいな漫才スタイルの若い人たちがガーっと入ってきたように、古舘さんが喋り手っていうのをテレビで確立したら、それを目指す若いやつらが絶対にくるだろうって思うんですよ。そしたらナレーションがなくてもテレビ作れるんじゃないかなとか。

川邊:ぜんぶ自分でできちゃう。

樋口:ロケにわざわざ行って、美味しいものを食べなくても、食の知識が言えるんじゃないかなとか。テレビの観かたが変わると思うんです。それはテレビのためでもあるし、もしかしたらそれをネットが違う意味でリズムとしてアレンジしたら、もっと違うものができるかもしれないですし。そこは夜明けのような感じはすごくします。 川邊;古くはいろんな実況、プロレスとかF1の実況のスタイルを作って、『報道ステーション』で報道のスタイルをまた確立して、またさらなる境地の新しいフォーマットを。

樋口:この人には、僕があまりやりたくない番組の司会はやらせたくないんですよね。「続いてのVTRはこちらです」とかってVTRが長くて、それを受けて喋るとか。

川邊:今のテレビの感じですよね。

樋口:そこには戻って欲しくないなって。帰ってきたときにそこは嫌だなって思うから、そのぶん喋るような番組にしたりとか。それを観た他の人たちが、「俺もこんなタレントになりたい」っていう人が増えると、テレビの色は変わってくるんじゃないかなって。

川邊:数十年に一度、そういう人って現れる。

樋口:音楽でもなんのジャンルでも現れますよね。

川邊:じゃあ、再び古舘伊知郎さんをお手本に仕立てあげたいと。

樋口:それをおっちょこちょいなやつが観て、「俺もできるんじゃないかな」っていうバカが追随して、そのバカの中にすごく良いやつがいて、その中から次を作るといいかなって思いますけどね。

川邊:古舘さんについていく、あるいは凌駕するためには、自分がどう変わらないとけないとかあるんですか?

樋口:もう寝ないしかないですね。寝ないで悩む、考えるしかないかなって。最近、寝ると仕事の夢を見るんですよ。だから起きるんです。

川邊:考え方を変える必要があるんですか?それとも量をもっと増やそうということなんですか?

樋口:自分の中では今、コップの水がこぼれてるんですよ。小説も書いてるし。だからもう一個、受け皿を作らないといけないなと思って。そうすると寝ないしかないしフォームとか気にしてられなくなってるなっていう。よく水泳で気が狂ったように自由形で泳ぐ人いるじゃないですか。息継ぎしてる場合じゃないみたいな。

川邊:古舘伊知郎さんの仕事も含めて、今後こういうことしていきたいとか、テレビに対してこういう期待をしていきたいとか、あるいはテレビを変えていきたいとかありますか?

樋口:本当に観かたを変えたいです。悪い言葉を使うと「視聴者になめられてる」んで。

川邊:プロ視聴者たちに。

樋口:録画はできるわシェアできるわ。だから今と違うなめられない方法を考えるしかないなってなったときに、やっぱり「今日これ観たい」、「今、これ観たい」って思わせる番組をつくるしかないと思うんです。そういう番組を1分でも作れたらいいなっていう感じです。

川邊:今、そういう番組ってあるんですかね。それともないから作るべきだと。

樋口:たとえばNHKのすごい気合いの入った番組って、惚れ惚れするときあるじゃないですか。ああいうのを、ああいう気持ちで民放の番組も作りたいなと思いますけどね。時間をかけたり金をかけたりするだけじゃなくて。

川邊:今、観たい。他のことを捨てても観たい。

樋口:LINEすることを止めたいとか。

川邊:ネットを切りたいと思うものをつくるのは相当大変ですね。

川邊:「今、この時間にこの番組を観ろよ」って、そういうこともチャレンジするし、古舘伊知郎さんを一つの軸にもするわけですね。

樋口:そう言ってないと、自分が逃げちゃいそうだから。

川邊:今の視聴者のテレビの観かたを変えたいと。

樋口:そうですね。

川邊:楽しみにしております。勉強になりました。

樋口:ありがとうございました。

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