タイズプレゼンテーション

夢中の深層~インタビュアー川邊健太郎~

第八回 中野信子さん 考える喜びを失わずに生きるということ

脳科学から見る「宗教」と「LGBT」

川邊:「脳のメカニズムと社会性」のように、現在取り組まれている研究の中で、本を書いてみたいと思っている分野はあるんですか?

中野:企画しているものでは、宗教。集団性を高める機能としての宗教。こんなに面白いものは無いと思いますね。否定するものでもないし、それをうまく使って発展してきた人類、という観点から見てみたいなと思います。

川邊:それは宗教的な、例えば十字架みたいなものとか賛美歌とかお祈りとか、イニシエーションみたいな儀式があるじゃないですか。その時に脳がどう動いているかを見るということですか?

中野:瞑想状態にあるときに脳がどうか、みたいな研究があったり。オカルトと一見思われているようなことも、意外と真面目に研究されていたりして。それをレビューしてみるのも面白いかなと思っていますね。あとは、性的逸脱行為みたいなところですかね。だいぶ毛色違いますけど。

川邊:性的逸脱行為というのは?

中野:LGBTっていますごく話題ですよね。実は13人に1人くらいはいるということがわかっていて、そこまでマイノリティではない。そうすると、こんなにいるということは、ちっとも不自然ではない。サイコパスより多いわけだから。「なんらかの意味があるんじゃない?」と思うわけですよ。なんなら今までそれだけが理由で排除してきたのは、能力が高い人を捨てていた、みすみす家庭にコミットせずに済む人たちを捨てていたかもしれないということになりますもんね。

「LGBT」
L:レズビアン(女性同性愛者)、G:ゲイ(男性同性愛者)、B:バイセクシュアル(両性愛者)、T:トランスジェンダー( 生まれたときに法律的/社会的に割り当てられた性別とは異なる性別を生きる人のこと)

川邊:日本は人手不足になるんで、ますますLGBTを雇うことになると思いますけどね。

中野:私たちのホモ・サピエンスっていう種は、極めて社会性が高いと言っていいですよね。おそらく、社会性が発達していることが原因で、LGBTのような人たちが必要なんじゃないかっていうことがあり得ます。次世代への貢献っていうのが、出産とか出産に関わる人物だけではない。他の社会の構成員が長い時間をかけて貢献しないといけないという特徴があって。それに寄与できるのが彼らなんじゃないかという考え方ができますね。そうすると、逸脱者と考えられてきた人が、実は社会進化みたいな観点から言うと、すごく重要な役割を果たしているんじゃないでしょうか。

川邊:そのあたりを着々と研究していると。

中野:進めているところです。

「苦しみを燃やして生きる」

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