川邊:新田さんご自身は危ない目にあったこととかないですか?
新田:いっぱいあります。進行中の案件でいうと、まさに恫喝訴訟というやつですね。私が記事を書いたことによって、「お前の記事のせいで業績が悪くなったじゃないか、倒産しそうじゃないか」と。悪いことやってるからなんですけど、「賠償金を払え」と、いま何社かから総額1億円くらいの損害賠償請求を受けています。
川邊:常にそういう状況にさらされていると。
新田:ただ勝てますんで。根拠はこちらにありますから。
川邊:すごい覚悟。
新田:覚悟がないとやってられないですね。
川邊:ご自身はいかがですか?働きまくっていますか?
新田:私自身は、ブラック企業時代は本当に超ハードワーカーでしたけれど。辞めるとき、独立する年に子供ができたんです。元々育児に興味があったんですが、ブラック企業にいる限りは物理的に時間を割けそうになかったんで。自分で事業を立ち上げてからは、育児、家事優先にしていこうと考えて。それ以降は、極力毎日18時半には仕事を終えて帰ってます。
川邊:よく言う、医者の不養生みたいな。そういう人を救いたいがあまりに、自分がすごくハードワークになって、部下にもそれを強いちゃったりしがちですけど。
新田:昔はありましたけど、反省して。やはり自分も働き方改革の提案をする立場の人間なんで。自分ができてなかったら人に言えないですから。こうやって効率化したら18時半に終われるよと、自分が実験台みたいなところもあります。
川邊:それでいまどうなんですか?去年とか今年とかでいうと、大手広告代理店の問題がクローズアップされて、だいぶ企業側が変わってきているのかどうかっていうのは。
新田:実際にお問い合わせいただく論調などから考えても、なんとかしなくちゃならないという企業さんが増えてきているので、それは良いことだなと思います。ただ、「なんとかしなきゃならないけど、どうしたら良いか分からない」というところも多いんですね。
川邊:なにして良いか分からないという会社さんには、どのように指導するんですか?
新田:今まで見てきた会社の成功例をお伝えしているんですけど。経営者が「やりきるまでは止めないぞ」と思って、やりきっていただくというのが大事、というのが結論です。ただなかなか難しいのが、それを現場まで浸透させなくてはいけない。まずは現場の方に不満を出し切ってもらうミーティングをやっています。いわゆる模造紙とかにそういったことを書いてもらって。「こんな不満がある」「あんな不満がある」と。それが不満で終わってしまっては意味ないので。じゃあどうしたら改善できるんだろうと。誰にやってもらったら良いのかとかっていうことを考えてくださいと。そういうところからスタートしていくことが多いです。
川邊:出たものを、どう実現させていくかを会社と話し合うような。
新田:そうですね。残業削減のためにやってしまっては失敗してしまうので。良い会社を作りたいとか、社員さんの人生をサポートしたいという「ミッション」「ビジョン」ありきですよと。結果として、会社が魅力的になって、残業も削減できたら良いですよねと。そういう論調でやっています。
川邊:それってでも、気になるのは最初のところですよね。社長がやる気になってというところで。特にそういうオーナー企業ですと、中間層の人が、「このままいくとマズい」と気がついて、なんとかしなきゃと思って新田さんのところに相談に来て、だけど社長は「もっと働いて欲しいくらいだよ」とか。
新田:いっぱいありますね。
川邊:そういう場合はどうするんですか?
新田:それは社長さんの考えが変わるまでは、契約しない形になりますね。ただ社長も話をすれば分かっていただけるので。「ブラックって言われちゃいますよ」と。「いまはやっていけても、今後の少子化、高齢化の中では、良い人入ってこなくなるし」と、社会情勢の話から入っていくと、だいたい分かっていただけることが多いですね。