川邊:ヤフー検索にはサジェストというのがありまして。あれで企業名を「なになに」って入れると、すぐにブラックって出てきますよね。「あれ消せないか」という相談がたくさん来るんですよね。手っ取り早く消せないのかから始まって。中身は良くなっているのに、ブラックって出ちゃうんだよっていうあれもあって。うちはあれは写し鏡なので、世間の人がそういう風に検索しているだけなので。消したりは一切していないんですけど。まさにあそこが世間の写し鏡で。実態は変わっているのに、それが広報されていないと、そうやって検索する人は、まだいたりとかするので。
新田:検索を消したいっていうところから入ってくるケースも多いですよ。そういう業者紹介してくれとか。おっしゃる通りで、会社の評判を良くしていって、ブラックという評判は下にいくように、良い噂が広まるようにしましょうよ、というように。
川邊:いままでやった中で、大きな挫折みたいなのはありましたか? 変えられなかったとか、負けちゃったとか。
新田:そういう意味では、まだ負けはないですね。万全な体制で臨んでいますんで。ただ、こういうリスクがあるケースでいうと、社員の方から、「この会社からセクハラ受けました」「パワハラ受けました」とか、「クビになりそうなんでなんとかしてください」というのも、いっぱいくるんですけど。中には、その社員さん自体に問題があって、働かない、やる気がないとかで怒られている。で、その逆恨みのために会社を陥れてやろうとしているケースがあるんですね。それは見抜かないといけないので。そんな問題の方じゃないのかということも含めた上で、やっています。
川邊:どうせ辞めるなら、派手にやってやろうじゃないかと。見抜けるもんですか?
新田:まあ、ある手段を取れば。これは企業秘密ですが。
川邊:世の中の風潮が変わってきているんで、「なんとかしないと」と思っている会社は増えてきているということですか。
新田:増えてはいますが、全部ではないですね。残念ながら、いまの労働法とかっていうのはちょっと甘いところがありますので。車でいうところのスピード違反と同じですね。スピード違反も違法だとは分かっているけれども、まあ皆やってるし、そんなに取り締まられないし、見つかっても罰金くらいで済むでしょと。残業代未払いなんかも労基法違反だと分かっているんだけど、どこもやってるし、見つかっても罰金30万円くらいで終わるしと。だったらやってしまっても良いかなという会社は多いですね。そこをなんとか変えていかないと、と思ってます。
川邊:あとは社員側のスタンダードみたいなものに、変化っていうのは生じているんですか?昔はハードワークでも当たり前だろうっていうところがあって。むしろ「ブラックだ」とか「帰らせろ」みたいなのは恥ずかしいというのがあって。それがようやく変わってきましたよね。
新田:若い人を中心に変わってきましたね。「成果出すから、やりたいようにやらせてくれよ」という声が大きくなってきた気がします。一方で、働き方改革で残業を減らそうとしても「そんなのやりたくない」という社員さんも一定数いて。よくよく聞いていくと、改革して残業なしでやっていくということは、だらだらとやって残業していた仕事を、ギュッと詰め込んで17時や18時に終わらせろという話になってくるわけですから。集中してできない人には辛いなと。なかなか難しい問題です。
川邊:日本人の根深い部分に起因しているんじゃないかなと。一つは、うちの社員でも「もっと成長したいんで、8時間以内で帰れなんて言われても嫌なんで、辞めてベンチャー行きます」みたいな社員もいますし。早く終わって、どこにいけばいいんだ、居場所がないです、みたいな。価値観を相当変えないと、変わらない気がするんですよね。
新田:後者の場合は、年齢の高い管理職の方が言うパターンですね。「早く帰っても、家に帰っても誰も相手にしてくれないし。飲み屋に行くにもお金がないから仕事させろ」みたいな。でも、ハードワークと労働時間は比例しないと思うんですよね。ハードワーク=残業と思っている方は多いですけど。5時間、4時間に詰め込んでも、中身が濃いという意味でのハードワークはできるわけですから。やはり成果で計るということをしてこなかったわけです。勤務期間とか、年功序列でやってきた部分が多いので。評価する側も、成果を細かく検証するより、労働時間で計れたほうが楽なんですよね。それに甘えてきた分もあるかもしれないです。