タイズプレゼンテーション

夢中の深層~インタビュアー川邊健太郎~

第九回 島田拓さん "アリ"を販売して家族を養う男

近所の公園から海外まで…世界を飛び回るアリハンター

川邊:アリの仕入れはどうしているんですか?

島田:仕入れは、日本のアリが多いので、自分で採集しに行ってます。アリって昆虫の中でも、とっても種類が多いグループで、日本だけでも300種いて、世界だと1万種とか1.5万種とかいるんですよ。なので、本当に身近な場所でもたくさんのアリを見つけることができるんですね。東京の大きな公園でも、ちょっと木の多い公園で探すと、30種以上のアリを見つけることができます。

川邊:じゃあ仕入れも近所で。

島田:近所でやることもありますし、あとは沖縄とか南西諸島に行くと、アリの種類がさらに増えるんですよ。本州のアリって、冬場は冬眠して採れなくなってしまうので。冬場は特に沖縄に行くと、冬でもアリが活動しているので。沖縄にも月に1回から、2ヶ月に1回くらい採集に行ってます。

川邊:それは釣りみたいな感じと一緒で、特に規制があるとか、届け出がいるとか別にないんですか?

島田:国内のアリは、そういったのはないんですけど。例えば、いまアルゼンチンアリというアリが日本で増えて話題になっているんですけど。

特に関西だと、かなり広まってしまって。「アルゼンチンアリ」が増えると、日本の本来のアリがいなくなってしまうんですよ。そういうアリというのは、“特定外来生物法”という法律によって、採集とかが禁止されています。なので採って、持ち運んだら法律違反になるようなアリもいます。種類にもよるんですけど、日本に輸入できない種類というのが、日本で増える恐れのあるアリと、植物に害を与えるようなアリは、法律で輸入が禁止されていて。南米に行くと「ハキリアリ」というのがいるんですけど。

葉っぱを切り取って行列を作る。あのアリは、農作物を食べてしまったりするので、輸入が規制されています。

「アルゼンチンアリ」
植物を食害したり、他の生物を攻撃するなどして、生態系を破壊することで知られる、南アフリカ原産のアリ。
「ハキリアリ」
特殊な性質を持つアリで、植物を育てたり、他の生物を生育することで知られるアリ。

川邊:海外に採りにいくこともあるんですか?

島田:海外もよく行くんですけど、海外はなかなか採集して持って帰ってくるというのが簡単にできないので。海外に行くときは、アリ繋がりでもう一つ興味があることがあって。アリの巣で暮らす虫なんですけど。
アリの巣で暮らす生き物が、実は日本にも世界にもたくさんいて、巣に入り込んで、アリを騙して、ご飯をもらったり、なかにはアリの幼虫を食べたりだとか。いろんな暮しをする生き物が、巣の中には入り込んでいるんですよ。

川邊:賢いですね。

島田:いままでアリの巣の中って、あまり研究されてなくて、まだまだ新種が見つかる世界なんです。そういったものを研究者と一緒に海外に行って、普段、一般の人が入れないような保護区なんかで、アリの巣の中の虫を調査するような手伝いをしています。

川邊:「アリの生態詳しいし、アリの巣掘るのも上手だから、一緒に来てよ」って。それで掘って、アリもそうだけど、見たこともない寄生している虫を探すのも、海外でやっていると。

島田:そうです。それが一番楽しいかもしれないです。

川邊:かなりマニアックなところに入ってきてますね。

川邊:新種の生物の学術名に、ご自身のお名前が付いているらしいですね。

島田:けっこう新種をたくさん見つけていて。僕自身は研究者ではないので、論文書いたりとかはしないんですけど。採ってきたものは、一緒に先生と行っていますので、先生に標本を送って、その先生が論文として発表してくれて。学名に僕の名前を付けてくれたりとか。「シマダイ」っていう。いま何種類もいるんですけど。

川邊:お気に入りのシマダイは?

島田:アリではなくシロアリの巣で暮らすハエです。ハエと言っても、羽がなくてお尻がシロアリのように膨れていて、ぶよぶよしていて。一見、ハエには見えないんですけど。体をシロアリに似せているんですよ。

川邊:擬態しているわけですね。

島田:それでシロアリの仲間になりすまして、シロアリの巣で暮らしているというハエなんですけど。それに自分の名前がついたことは嬉しかったですね。 生態に関する詳しいことはまだわかっていないんですけど。

川邊:それは、巣をバーっと掘って、かき分けて探すんですか?

島田:いちばん見つけやすいのは、春先のポカポカ暖かいときに、石をどかすと、石の下にアリの巣があるときがあるんですよ。暖かいときって、地表部分に、巣の中のアリたちが温まりに出てくるんですよ。それをどかしたときに、だいたいそこにいるので。だいたい小さくて1mmくらいしかないので、地面にスレスレでジーっと見ながら、アリの群れの中からアリじゃない虫を探し出すんですよ。なかには、アリの体にくっついていたりとか、アリの幼虫にくっついていたりするので。隅々まで見ます。

川邊:ほお。「コイツだっ」て言って、ピッと。

島田:そうです。採集するときは小さくてつまめないので、吸虫管っていう口で虫を吸う道具があるんですよ。間に容器があって、吸うとその容器の中に虫が入るんですよ。それを持ちながら。アリの採集もそれでやるんですけど。

川邊:それを先生に見てもらって。かなりマニアックなことやってますね。

「やっていることは小学生の頃から変わらない」

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